大関

辛丹波

丹波杜氏の心を継ぐ酒

大関 寿蔵杜氏 小田原利昭

昭和50年に大関へ。18歳で酒造りの道に入り寿蔵をはじめ数々の蔵で修行。
平成19年より寿蔵杜氏となり辛丹波を初め、長兵衛、純米山田錦、十段仕込、の酒造りを担当。
平成26年「第94回丹波杜氏自醸酒唎酒会」県知事長賞受賞他、受賞歴多数。

辛丹波とはどんな酒か?
辛丹波を造る「小田原杜氏」と
「寿蔵」を通して紐解いていく。

引き継がれる丹波杜氏の技

日本三大杜氏の一つとして名高い丹波杜氏。酒造りの技術集団として、灘五郷の酒造りを300年以上にわたって支えてきました。『辛丹波』という商品名は、そんな彼らの故郷に由来しています。その酒造りを継ぐ心にふれたいと、『辛丹波』の蔵に、小田原利昭杜氏を訪ねました。

丹波地方の農民が農閑期の冬場に、灘や伏見の蔵元で出稼ぎをしていたことが丹波杜氏の始まりです。小田原杜氏が酒造りに足を踏み入れた時代には、杜氏をはじめ40〜50人の丹波の蔵人が大関で働いていたといいます。
「杜氏のことをみんな『おやっさん』と呼んでいましたね。私のような下っ端からすれば、おやっさんは神様のような存在でした」と小田原杜氏。
そんな歴代のおやっさんが口をそろえて言っていたのが、「櫂で溶かすな」ということ。酒造りの工程は「一麹、二酛、三造り」といわれるほど、麹造りが重要だとされています。櫂を入れて溶かすのではなく、放っておいても自然に溶け出してお酒になるぐらい力強い麹を造る。丹波杜氏の高い技術と自信がうかがえるエピソードです。

  • 酒造りを熱く語る杜氏

  • 『辛丹波』がつくられている寿蔵

  • 麹の出来は五感で確かめる

自分の求める麹を造るために

麹の原料となるお米は、その年によって柔らかさや水分量が変化し、それに合わせて精米、洗米・浸漬、蒸米といった原料処理も変えていかなければなりません。小田原杜氏が「麹造りは何年経っても1年生」と言うように、酒造りの中で最も難しいのが麹造りなのです。
現在は麹造りの多くの工程を、機械製麹(きかいせいきく)が担います。「機械で合理化されても、手づくりのような麹をつくることが理想。いかに自分の求める麹を造るか。麹造りでは誰にも負けないぞという気持ちで造っています」と小田原杜氏は、その意気込みを語ります。
こうして丹精込めて造った麹が醪タンクに仕込まれると日本酒造りも、いよいよ大詰め。醪タンクの中では麹の酵素が米を糖分に変える糖化と、酵母が糖分をアルコールに変化させる発酵が行われ、日本酒に醸されていきます。

わが子のように育て上げるお酒

醪タンクの温度はコンピューターで管理されており、日々、データが上がってきて蓄積されていきます。
「しかし、そのデータだけに基づいて、今日は何度、明日は何度と決めることはありません。最終的には、醪の状態を見て決めます。データだけに基づいた温度設定は、醪をいじめているような気がするんですよ。酒は生きもの。たとえば同じ日に、同じ条件で3本のタンクに仕込んでも同じになることは決してありません。タンクそれぞれで発酵の進み具合も変わってくる。その違いを見極めて、醪を育てていかなければならないのです」
そんな小田原杜氏は、醪が心配で夜眠れないときもあるそうです。「気になると早朝や休日でも醪タンクを見に行きますね。良い状態だと確認できたら安心するんです」とタンク一つひとつを、わが子のように気にかけながら作業を進めていきます。
「みんなが手助けして一人前の成人になるように、人から『良いお酒だ』と認められるものに育てていく。そのために私たちが必要なのだと思います」

  • 酒造神「松尾大社」を祭る神棚

  • 醪の状貌(じょうぼう)を確かめる櫂入れ

  • 酒母、水、麹、蒸し米でつくった「もろみ」。発酵が進みブツブツと玉泡ができるのを確認すると、杜氏も一安心

想いをつなぎ、和で造る

小田原杜氏がこのようにこだわりを持った酒造りをしているのは、特別な想いがあるからだといいます。
「『辛丹波』は山田錦の麹を使っています。山田錦は酒造りにおいて、最高級のお米。しかし、栽培には非常に手間がかかります。こんな良い原料をいただいているのだから、育ててくださった農家の方々のためにも、良いお酒を造ろうと思うのが造り手の正直な気持ちですね」と小田原杜氏。
そして良いお酒を造るために、もう一つ欠かせないものがあるとか。「仲間の『和』です。酒造りは一人ではできません。みんながともに泣いて笑って一丸となることで、良いお酒ができるのです」
丹波杜氏の伝承技術、お米をつくる農家の方々への想い、仲間との和、そして杜氏自身のこだわり。それらが凝縮されて醸された大関『辛丹波』は、確かに丹波杜氏の心を継ぐ酒でした。

『辛丹波』の蔵を訪ねてみて

小田原杜氏は「第94回丹波杜氏自醸酒唎酒会」で兵庫県知事賞を受賞した名杜氏。そんな名杜氏がつくる『辛丹波』は、スッキリとした飲み飽きない辛口のお酒です。「『辛丹波』に合わせるオススメの肴といえば?」という質問に、名杜氏の頬がふと緩みました。「カツオ出汁のきいた湯豆腐ですね」。飽くことのない酒造りと飲み飽きることのない『辛丹波』。一本芯の通った仕事ぶりを肌で感じました。

吟醸酒の部で、1点のみ選ばれる最高位の「兵庫県知事賞」をみごと受賞